ワインを愛好する皆さん、これからワインを愛好する皆さん、こんにちは。これを書いている僕自身も駆け出しのワインファンで、先日J.S.A.ワインエキスパートの一次試験に無事合格することができました。この経験を通じて強く感じたのは、ワインの勉強とは、単にブドウ品種や産地名を暗記することではない、ということです。それは、一杯のグラスを通して、世界の文化、歴史、地理、そして何よりも人との繋がりに触れる、豊かで壮大な旅に他なりません。
この記事は、これからワインの世界へ一歩踏み出そうと考えている方、そしてワインをより深く楽しみたいと願っている方のために、このワインの魅力と、そのワインを学ぶことの価値をお伝えするものです。この道のりが、いかに私たちの日常を深く、そして愉しいものに変えてくれるかについて、共に探求していきましょう。
一杯のグラスが変える、あなたの世界
ワインの学習は、単なる知識の蓄積を超え、私たちの世界観を広げる力を持っています。その変化は、一杯のグラスから始まります。

歴史と文化を味わう「液体のタイムカプセル」
ワインの歴史は、想像以上に古く、人類の文明発展と密接な関係を持っています 。現在発見されている最古のワイン醸造の痕跡は、紀元前6000年頃のジョージア(コーカサス地方)に遡ります 。紀元前5000年頃には、メソポタミアの「ギルガメッシュ叙事詩」に大洪水に備えた船の乗組員にワインを振る舞った記述が残されており、ワインが人類にとって特別な存在であったことが分かります 。古代エジプトでは富裕層の専有物として副葬品に納められ、ギリシャでは酒神ディオニソスを讃える祭典で消費されるなど、宗教的な意味合いも強く持っていました。
ワインが持つ深い歴史の物語は、単なる歴史的事実の羅列ではありません。それは、私たちが今手にしている一杯のワインが、古代から現代まで続く壮大な物語の結実であることを教えてくれます。例えば、古代ローマの戦士たちは、征服した土地の脇に農作物の種を蒔きました。これは食料確保の知恵であると同時に、征服地に新しい文明を定着させるための行為でもありました。ガイウス・ユリウス・カエサルがガリアを征服した道程は、現代のフランスの偉大なるワイン産地、コート・デュ・ローヌ、ブルゴーニュ、ボルドーへと続く道でもありました。このように、ワインの歴史を学ぶことは、古代の交易ルートや帝国の覇権が、いかに現代のワイン産地やブドウ品種の分布に影響を与えているかという因果関係を理解することに繋がります。グラスを傾けるたびに、遠い昔の文明や人々の営みに思いを馳せることができるのは、ワイン学習の醍醐味と言えるでしょう。
趣味としてのワインを「より深く」楽しむために
ワインの知識は、五感を通して感じるテイスティングの体験を格段に向上させます。ワインを「飲む」という行為から、その香り、味わい、そして背後にある物語を読み解く「テイスティング」へと、楽しみ方が一歩深まるのです。
ワインの味わいは、そのブドウが育った土地の「テロワール」に大きく左右されます。テロワールとは、気候、土壌、地形、そして人間の手による影響の総称です。ワインの勉強を通じて、温暖な気候の産地(例:チリやアメリカ)のワインは果実味や甘みが豊かになり、冷涼な気候の産地(例:フランスのシャブリやブルゴーニュ)は酸味が豊かになる、といった気候と味わいの関係性を学ぶことができます 。また、大陸性、海洋性、地中海性、山地といった様々な気候タイプがブドウに与える影響を体系的に知ることで 、グラスの中の液体が、その土地の風土や気候条件を反映した「液体の日記」のように感じられるようになります。
さらに、テイスティングの作法を学ぶことで、その体験はより豊かなものになります。グラスを回す「スワリング」が、ワインを空気に触れさせて香りを開かせるための行為であること 、グラスの脚を持つことが、手の熱でワインの温度を変えないためのマナーであること 、そしてワインをグラスの3割ほどまでしか注がないのは、香りをグラス内に留めておくためのスペースを確保するためであること 、といった知識は、単なる形式ではなく、ワインを最も美味しく楽しむための知恵であることに気づかされます。これらの知識は、ワインを「なんとなく飲む」から、「意図的に味わい、分析する」という、知的で能動的な愉しみに変えてくれるのです。
ワインが繋ぐ、新たな人との輪
ワインの知識は、人との繋がりを広げたり深めたりする強力な武器となります。グラスを片手に、そのワインの産地や歴史、醸造方法について語り合うことは、ワインコミュニティにおける人々の間にある壁をあっという間に取り払ってくれるでしょう。
具体的には、ワインバーでの定期的なテイスティングイベントや 、地域のワイン会、ペアリングディナーといった場に積極的に参加することで、同じ情熱を持つ仲間と出会うことができます。また、学んで得た知識をもとに、生産者やソムリエに直接質問をすれば、より深い会話が生まれ、新たな視点や知識を得る機会も増えるでしょう。さらに、ブログやSNSで日々のワイン体験を発信すれば、同じ趣味を持つ仲間と繋がりやすくなり、オンライン上でも新たなコミュニティを築くことができます 。ワインは美味しいだけではなく、私たちの人生をより豊かにする、新たな人との輪を広げるためのツールにもなるのです。
ワインエキスパート試験:学習の羅針盤
ワインの広大な世界は、どこから手をつけていいか分からず、時に圧倒されることがあります。しかし、ワインエキスパート合格という明確な目標を持つことは、この旅路に羅針盤を与えてくれます。そして、それはまた、学習そのものを推進する強力な原動力となります。ワインエキスパートについて、詳細は日本ソムリエ協会ホームページをご確認ください。
ワイン学習の取っ掛かりとして、ワインエキスパート取得がおすすめな理由はこちら。
また、ワインエキスパート一次試験合格のための勉強法についてはこちらをどうぞ。
さあ、ワインの勉強を始めよう!
駆け出しのワインファンである僕自身、ワインを学ぶことで、世界の歴史や文化、そして地理への理解・興味が一段と深まりました。これは学び始める前から期待していたことでもあり、実際にその魅力を体感できています。
ワインの勉強は、単なる知識の習得にとどまりません。五感を使って味わいを探り、新しい人とのつながりを生み出す、まさに豊かな旅のような体験です。
この記事を読んで、少しでも「ワインを学んでみたい」と思っていただけたら嬉しいです。一緒にワインの奥深い世界を探求してみませんか?